緒方句狂


盲目の俳人・緒方句狂の『冬野』掲載作品


緒方句狂の『冬野』掲載作品(抜粋):

※『冬野』の持永真理子さまのご協力に感謝します。

冬野平成五年7月号  八百号記念特集号「ホトトギス」巻頭を飾った作品より 昭和十八年五月号 空耳か炉咄かるく手で押さへ 豊前 句狂 炉咄のふとだんまりし遠千鳥  同 灯吹竹吹いてみもして炉辺たのし  同 昭和十九年八月号 我が杖も春待つものゝ一つかな 豊前  句狂 旅の炉に夜を深めつゝ寢惜まれ  同 吾を背ひ渡る橋あり探梅行  同 昭和30年4月9ケ町村が合併し豊前市。 冬野平成二年五月号 河野静雲先生十七回忌記念特集号 「冬野」巻頭句集より 昭和十六年十二月号 選集にありし我が名やホ句の秋  赤池 緒方 句狂 俳諧の盲ひに夜毎月の秋 木の実落つ小さな木魂返しつゝ 貼り替へし障子明りに盲かな 昭和二十一年五月号 客おいて花に晝餉の渡舟守 赤池 緒方句狂 杖抱いてかごめばありぬ花疲れ  同 囀の聲きゝ分けて居てたのし  同 垣間見る好者はゞみ濃山吹  同 昭和二十一年七月号 梅雨寒の膝かひ抱き人を恋ふ  赤池 緒方句狂 梅雨の蠅とんでうまゐの人醒ず  同 梅雨の爐を焚き煙らして盲かな  同 昭和二十一年十月・十一月号 合併号 十一月 十六夜の雨となりつゝ鉦叩  赤池 緒方句狂 字を習ふ盲に低く秋灯 友の訃へまかる杖突き老の秋 昭和二十一年十二月号 現身となりて醒めけり鉦叩  赤池 緒方句狂 籠もり居る障子の内の秋日和 夜長さの我を見守り父母の像 佇める杖に秋風来ては鳴る 昭和二十二年二月号 このごろは日脚伸びると杖をとり  赤池 緒方句狂 待春の我を見守り虚子の像 ひねもすの雪解雫に御賓頭盧 昭和二十二年三月・四月 合併号 四月 春眠の妻に貧しさなかりけり  赤池 緒方句狂 つまごめとなりつゝ垣を繕へる 塞がんと思ひつゝ在る爐邊かな 昭和二十二年五月号 雛あられお手のくぼして盲はも   赤池 緒方句狂 畑打の肌脱ぎしより鍬高く 縁先に忘れられいて杖のどか 昭和二十二年七月・八月 合併号 八月 山葵田をたつきの四五戸ほととぎす  赤池 緒方句狂 露涼し杖にまつわるものの蔓(ママ) うばたまの一人の闇に端居して 端居してはるけき素顔なつかしむ 昭和二十二年九月号 彌陀の前御免頂き三尺寝  赤池 緒方句狂 方蔭を與へられつゝ伴はれ 杖涼しとびつく浪に身をゆだね 松蔭のそこなる床几心太 昭和二十三年二月号 合併号 草庵のこの鵙日和誰ぞ来ずや  赤池 緒方句狂 草の戸にこだまし暮るゝ鳴子かな ひとり居に鳴子の音の来る障子 昭和二十三年三月・四月 合併号 四月号 誰れ待つとなく元日の爐ほとりに  赤池 緒方句狂 羽子の子に邪魔がられつゝ杖をやる 突き古りし杖にぞ去年なつかしむ 昭和二十三年六月・七月号 合併号 七月 風吹いて鶯啼かずなりにけり  赤池 緒方句狂 啼くと言ふ千鳥を待てば春の月 囀の崖を支へて潮見茶屋 昭和二十三年十月号 常闇の春を惜しみて杖と在り  赤池 緒方句狂 縁先に待ち居る杖や更衣 磴半ば花橘の香に堰かれ 昭和二十三年十一月・十二月 合併号 十一月 我が闇にとばぬ蛍をさみしとも  赤池 緒方句狂 水打って縁が涼しといざなはれ 蚊火焚いて所在なき夜を一人居る 十二月 坊涼し雷の訪れありしより  赤池 緒方句狂 合歓咲いて立場茶屋ありバス止る 我が杖を射すくめ雷火いくそたび

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